読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

何でもない話


レストランの駐車場に一台の車が止まる。
その中から一組のカップルが出てきた。
「オススメの店なんです。」
楽しそうに言う男。
「昔、よく食べに来ていました。おいしいんですよ、安いし。」
「ふつうのファミレスじゃない。チェーン店なんだから、どこも一緒でしょ?」
女が、からかうように言う。
「そうでもないんですよ。」
子供のようにはしゃぎながら店に入る。
女も後に続く。

注文を取り終えた店員が、二人の元から離れた。
「今回は私がおごるって言ったでしょ。」
女がおしぼりの袋を開けながら言う。
スペシャルステーキとステーキセット、どっちにするか迷ってたんでしょう。スペシャ
ルステーキにすれば良かったのに。」
「そんな、そっちの方が高いじゃないですか。」
「だから、今回は私がおごるって言ったじゃない。貴方はお金の事、気にしなくてもいい
の。」
「でも、おごられるんだったら、気にしますよ。」
「あのね、もう少しで私たち、結婚するんだからね。遠慮もなにも要らないでしょう。」
「‥でも‥‥やっぱり気にしてしまいますよ。」
女が、ふうと息をついた。
「前から言ってるけど、私語でいいんだよ。」
「‥でも僕、私語で話すと方言が出ちゃいますから。」
「あのね、私は別に田舎生まれを軽蔑したりしないわよ。」
「そうじゃないですよ、方言が嫌なわけじゃないですよ。ただ、僕は田舎の中の田舎って
ところで生まれたから、方言が凄いんです。きっと、僕が方言で話したら、会話になりま
せんよ。」
女が、もう一度息を付いた。「結婚したら、貴方の土地の言葉も教えてね。」
「もちろんです。」
ステーキセットが運ばれてきた。

 

 

---

corrado@comにて「濱田マサミ」名義で公開していたものを再公開