2017-04-01から1日間の記事一覧

庭の盥

太陽と草の匂いが、中庭じゅうに蔓延していた。使い込まれすぎて黄金に輝きはじめていたアルミのたらいは、あづさの足の動きに合わせて中の湯をちゃぷちゃぷ言わせた。午後に入ってすぐの空はどこまでも青く、重そうな雲は真っ白だった。「お湯加減はいかが…

旅人の靴

たったひとつこの世に魔法があるとしたら、彼の靴こそがそうだ。世界の果てと果てを何往復したって、ちっとも擦り減りはしないし、まして穴なんて絶対にできないだろう。 彼は、旅人なんだ。 砂漠の真ん中にぽつんとあるその建物に、彼は興味を惹かれて近づ…

エイトレス王妃

<1> 国王、エイトレスは三時間前には妻帯者となっているはずであった。既に広間には大勢の貴族達で溢れ、神父は祭壇の前で朝から聖書を五度も読みきっていた。三時間、この部屋で喋る者は誰もいなかった。 公爵、サラザウダは、自分の背骨が凍り付いてい…

梅雨の夜

私と現実との間には隙間がある。真空の隙間だ。現実に触れようとすれば、気圧差に耐えられずに皮膚が裂け肉が吹き飛ぶ。 この隙間に気づいたのは、ごく最近だ。 恐怖は朝と言わず昼と言わず腹の中心からにじみだす。脳は後頭部から細く伸び上顎に重心を残し…

楽園の羊

ただただ広い草原に、2匹の羊が寝転んでおりました。羊のだらけぷりと言ったらもう、脳が溶けているのかと思うほどでした。2匹とも毛皮さえ脱ぎ、片方は腹を、片方は背中を地面にどろつかせ、太陽や土を見るだけでぼおっとしておりました。脱ぎ散らかした毛…

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はじめまして。id:hamapuです。 このブログでは、書き溜めた詩・短い小説などを公開していこうと思います。 感想などはコメント欄にどうぞ。